【独り寝のお作法】

115. 男たちのセックス観が詰まった珍・文化遺産「昭和的バイブ」はどこへ行く?


hitori

 世にあまた売られているバイブレーターをカテゴライズする語として、私は「昭和的バイブ」という語をよく使います。個人的な造語で、広がっている感もぜんぜんないのですが(笑)。定義もかなりざっくりしていて、「男性視点で作られた、デザイン・構造ともに古臭いバイブ」といったところ。アダルトグッズのお店(ネットショップも)をのぞいたことのある方なら、「あ~、あんな感じのバイブね」とすぐに思い当たるでしょう。

 全体的に「強そう」なのが特徴です。個人的には、いちばん挿入しやすいカタチは「ペニス型」に尽きると思っています。古事記では、イザナミの「成り成りて成り合はざるところ」とイザナギの「成り成りて成り余あまれるところ」を合体させて日本という国ができたと記されていますが、そんな例を挙げるまでもなく男性の凸と女性の凹は合うようにできていて、それから遠く離れたカタチのものは挿入しにくいのが実情です。


女は男ナシでは気持ちよくなれない?


 でも形状がペニスに近いことと、見た目がペニスっぽいことは、まったく違います。バイブ=ペニスの代替品ではありません。「男がいなくて淋しいからバイブを使う」「ほんとは、バイブより俺のチンコのほうがいいんだろう」と思っている男性はいまだたくさんいて、さっさと絶滅することを祈るばかりです。彼らの脳内では「女性は男性ナシでは気持ちよくなれない」んですよね。

 でも、女性が自分で、自分のために気持ちよくなろうとするとき、ペニスのイメージがむしろジャマになることがあります。そこで、バイブでも「ペニスのカタチに近いけれど、それを想起させないもの」が求められ、欧米ブランドでは早くからそれが主流でしたが、いま国内ブランドでも増えています。

 一方、「強そう」路線の昭和的バイブも、ある意味、ペニスを思わせないフォルムです。奇怪なほどゴツゴツしていたり、ヘッド部分がやたらと大きかったり、まさに異形。

 バイブ=ペニスの代替品なんじゃないの? と思われるかもしれませんが、これはこれで意味があります。官能小説などではよく「いきり立った男根」という言い回しを目にしますが、そんな男性の願望が託されているように、私には見えるのです。怒張して通常よりも強く、たくましくなったペニスはイメージのなかで異形化し、それがバイブのデザインに反映されています。

 全体からチープ感がビシビシ放たれているのも、特徴のひとつ。実際、お値段はハイクオリティバイブを大きく下回りますが、私は「安い」ものは好きでも、「安っぽい」ものはパスしたい性分です。

 異形だわ安っぽいわで、女性の琴線に触れないどころかドン引きされる場合がほとんどです。不自然な形ゆえ挿入しにくい、挿入したとき痛いことも度々あります。にもかかわらず、いまだにこの手のバイブは多数販売されています。

 アダルトグッズのネットショップで「新発売」のカテゴリーをクリックすると、「これ、いつ作られたもの? ほんとに新発売?」と首をかしげてしまうバイブレーターを目にします。いえ、メカニック部分は進化しているんですよ。それなのに、十年一日のごとく変わらないデザインのものが発売されているって、どういうこと?

 つい最近、某メーカーさんから、「うちのバイブは、女性が買うことをまったく想定せずに作っています(キッパリ)」といわれて唖然としたことがあります。ネットショップよりリアルのショップでの売上を重視しているところで、なるほどリアルショップの暖簾をくぐれる女性は圧倒的に少数派です。そこで売られているバイブは、当然、男性の性的興奮を煽るタイプのもの。なるほど~。昭和的バイブを出すメーカーにとっては、女性はマーケットに含まれてすらいないんですね。女性の身体に使うものなのに、女性の身体が無視されている。アダルトグッズの世界の一部は、まさに昭和の時代で時間が止まり、一分も進んでいないのです。


秘宝館と同じ位置づけ


 さて、さんざんdisってきた昭和バイブですが、私は「なくなればいい」と思っているわけではありません。それを生み出した男性たちの思考はほんと絶滅してほしいのですが、それによってグロテスクに形作られたバイブそのものには、おかしみを含む悲しさを感じます。

 時代に取り残されたことに気づいていない悲しさ、なのに、ひとりで虚勢を張って「いきり立っている」滑稽さ。秘宝館にも通じるそのたたずまいは、なぜか無視できないものがあります。秘宝館やかなまら祭りのような「珍・文化遺産」としての存在意義があるといってもかご運ではないでしょう。ある意味、日本人男性の「セックス観」の一端を表していることは間違いですから。

 私はバイブであればなんでも試すことにしていますので、こうしたバイブにもよくトライします。市場におけるマジョリティはいまだこのタイプですし、それが見た目を裏切らず悪いものであれば、それは注意を換気していきたい。でも案に相違してイイものもあるんですよね。

 バイブにはそもそも相性がありますから、人を選ぶという点ではハイクオリティバイブよりもハードルが高いです。そして、使い方には注意が必要。こうしたセンスのないバイブを選ぶ男性は、得てしてセンスのない使い方をするので、カップルで使うときは重々気をつけたほうがいいことも合わせて注意を喚起していきます。

 そうした条件を踏まえて遊べる人になら、もしかしたらいい出会いがあるかもしれません。女性のなかにも、「いきり立った」見た目に興奮を覚える人は一定数いるでしょうし、私はなぜかこうしたバイブを見ると「これは女性への挑戦だ」と感じることもあるんですよね。昭和的バイブが販売され続けるかぎり、試しつづけようと思います。結局は無視できないこの感じ、なんなんでしょうね(笑)。


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■桃子さん

オトナのオモチャ200種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。 ブログ twitter

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