【独り寝のお作法】

119. アダルトグッズ漫画に付き物の「処女性」と「性の客体でいろ」という価値観


hitori

 アダルトグッズ業界と聞くと多くの人はアヤしいイメージを持たれるでしょう。かつての私も「胡散臭そう」「反社会的なのでは」とゴリゴリの偏見を抱いておりました。そういう時代があったのは確かですし、いまもその片鱗がまったくないとはいえないのかもしれません。でも、私が間近で見ているかぎり、そこで働く人たちはほかの業界にお勤めの方となんら変わりません。

 よくはわからないけどスゴそうな世界、と思われているからでしょうか。「アダルトグッズ業界」はコミック作品で、たびたび舞台になっています。たとえば、花津ハナヨさんの『情熱のアレ』。綿密な取材をもとに描かれているので、ラブコメ要素もたっぷりありながら“お仕事漫画”として楽しめます。

 なんといっても、肝はリアリティですよね。SNSを見ていると、ドラマ『コウノドリ』では産婦人科医の方々が、ドラマ『重版出来』では出版系の方々が「号泣!」などエモーショナルな書き込みをされていて、リアリティこそ感動の源泉なのだと実感します。それでいうと、『情熱のアレ』以外のアダルトグッズ業界モノは、私にとってはなはだ物足りない。“お仕事モノ”ではなく“エロ漫画”として描かれるものがほとんどなので、それも致し方なくはあるんですけど。

 花見沢Q太郎『おとなのオモチャ』(少年画報社)はそのものズバリのタイトルですが、主人公は地味でまじめ、そして恋愛経験のない……正確にいうと“処女”の姫乃小毬ちゃん。出た出た~、これ、アダルトグッズ業界モノの典型です。「処女、ないしは恋愛経験の少ない子がアダルトグッズ会社に就職」「何をする会社かよくわからずに入社したら、アダルトグッズメーカーだった!」などなど。漫画の世界にツッコむのは野暮ですが、後者については、バカなの? としか思えません。おそらくこれには主人公に「性にもアダルトグッズにも免疫のない、まっさらな視線で業界を見る」役割が主人公に課せられいるがゆえなのでしょう。“業界における処女性”が求められているのです。それにしても、もう一度いいたいんですが……会社の業務内容も知らずに入社、って雑すぎない?

 先週紹介した『日本人はもうセックスしなくなるかもしれない』(幻冬舎)で、AV監督の二村ヒトシさんは「童貞のまま、AV監督を目指す男性が増えている」とお話をされていました。たしかに、処女でアダルトグッズ業界入りも、まったくありえない話ではないのかもしれません。バイブレーターを使うバージンはそうそういませんが、ローターであれば少なからずいるはずですので、処女ならではの視線を商品開発に反映するのは意義のあることです……が、『おとな~』は男性向けのエロ漫画ですから、この設定は「処女なのにオモチャ!」というギャップ萌えを誘発する装置以外の何者でもありません。


処女なのに、は夢のフレーズ


 処女なのにAV監督という設定は、渡辺ペコさんの『キナコタイフーン』にありましたが、こちらはその処女性で男性の勃起を誘う要素は皆無で、むしろそれを打ち砕くようなハチャメチャぶりやこじらせぶりが発揮されていて、たいへん面白かったです。女性の“処女”は男のためのものではなく、その人本人のものですもんね。その彼女が、AVという男女の性のなまなましい現場に触れることで何か変わるのか? 1巻以降、続刊していなのが惜しまれます。

 一方で、女性だけのアダルトグッズ・メーカーという設定は斬新です。私の知るかぎり、これまで国内にそんなメーカーは存在しません(ショップならあります)。長らく男性主導、というか作り手に男性しかいなかった日本のアダルトグッズ業界。いまは過度期ですが、まだまだその傾向は強いです。キャッキャいいながらバイブやローターを開発し、それを女性ユーザーに届ける……その一部始終を女性だけで行う会社があったらステキですね。そんな私の夢想はあっさり裏切られ、その「ピンクハートカンパニー」はオナホールのヒットで一躍有名になったとのこと。女性に使うバイブに女性目線が大事なのと同様、男性が使うオナホールは男性が考えるのがいちばんだと思うけど。

 でも、「処女なのにオモチャ!」と同様に「女が作るオナホ!」は、一部の男性にとって“夢”のあるフレーズなのですね。しかも、この主人公は自分の膣内を型取り(そんなこと可能なの?)して、それをオナホールとして販売します。そして、パッケージには自分の写真を掲載。目線を入れていてもわかる地味かわいさで人気に火がつき、バカ売れする、というミラクルがおきます。

 くり返しになりますが、こうしたコミックにツッコむのは野暮です。私はこれまでにも男性の男性による男性のためのセックスファンタジーを批判(親父エロ雑誌とか、中出し至上主義映画とか)しては、「便所に顔をつっこんでクサいクサいと文句いっているようなもの」「ウコンアレルギーがあるのにカレーを食べにいって怒るなよ」と某所で非難されてきました。でも、そもそもクサい便所が当たり前のことになっているほうがおかしくない? クサくない便所もあるんだよ、ということで、ここでも一女性として、いえ、アダルトグッズに関わる者としてあえてツッコみませてください。

 アダルトグッズに携わる仕事をする=性の客体になりたい、ではないから!

 アダルトコンテンツに携わる女性はエロい、オカズにしていいという男性の誤解は根強く、それを逆手にとって「ソフトオンデマンドの女性社員」のAVは長らく定番となっています。でも、性生活をサポートする商品を作る/売ると、自分自身を性の客体として売るには天と地ほどの差があるのです。まー、頭のなかで妄想されるぶんには勝手にしてくださいというしかないですが(キモいけど)、エロい質問をしたり、エロい行為を要求したりするとなると、それは単なるセクハラです。私もこれについては、何度もイヤな目に遭ってきました。


グッズの発想はユニークなのに


 まして、同作品にあるように「アダルトグッズショップに納品いったら、そこの店主に『あのオナホの子だよね』とセクハラされた」は論外です。私が知るアダルトグッズショップの人、みなさんまじめに販売のお仕事していますよ。この手のショップで働く人への偏見を感じ、気持ちが萎えました。

 ローテンションになりながらも本作を読了できたのは、ひとえに本作に登場するラブグッズのおかげです。「女性だけのメーカー」という触れ込みのわりには、商品名が「乱棒怒りの露出」「ピンクまんまん」「アナルハメハメ」って……それ、20年以上前のオッサン的センスですよ。でも、時おりユニークなものが混ざっているので見逃せません。

 たとえば「ミズダコローター」。その名のとおりタコ型ローターですが、水中で使うと脚がウニョウニョと伸び、振動しながら肌にその脚をからませて触手プレイに突入! 「乳クラゲ天国」は、これまた名前のセンスはひどいですが、おっぱいにかぶせて使うローターです。内蔵されたクラゲっぽいジェル状ローターが乳首を覆って刺激……って想像するとなかなかイイかも!

 現実のアダルトグッズ開発現場では技術的、予算的に無理! と即却下されそうなものが続々登場するのは、まるでドラえもんの道具を見ているようなワクワク感があります。あ、自分でいっておいてなんですが、アダルトグッズ専用ドラえもん、いいですね。リアルから遠くはなれたファンタジー的アダルトグッズ漫画なら、処女を無理やり業界で働かせるのではなく、面白グッズが続々四次元ポケットから出てくる漫画のほうが私は読みたいです。


このコラムへのレビュー

コラムに対するご感想をぜひお寄せください。

プロフィール

momoko

■桃子さん

オトナのオモチャ200種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。 ブログ twitter

オススメコラムリスト

掲示板

  • イク手前⁇(1)
    この前エッチしていたら、今までにない感覚におそわれました。 今までもとっても気持ち良くて涙が出ることもあったし身体がおかしくなりそうにもなっていたのですが、この前は、鼻水出るほど涙が勝手に溢れてきてとまらなくて、頭もぼーっとして、本当に変!と思いました。 気持ち良いけどやめてほしい!みたいな、、。これってイク前に感じるものなのでしょうか?人によって違うとは思いますが同じように感じた方いませんか?
  • イベント告知(3)
    シルクのみたいに敷居が高くないといいな ブラブラしてたら 有馬さんがいたみたいな そんなイベント希望します

お支払い方法

クレジットカード
コンビニ支払い
銀行振込
その他の支払方法
ページTOPに戻る