【独り寝のお作法】

128. ストーカーされるのは「いい女だから」? 身近にある被害女性への自己責任論


hitori

 気が置けない人たちと飲んでいたときのことです。女性のひとりが、過去、ストーカー被害に遭った経験を打ち明けました。曰く、交際した男性と別れた後、その男性がストーカー化がしたケースが3度あった、と。仮にその女性をAさんとします。

 交際中はAさんの家で過ごすことも多かったため、当然、元カレたちは自宅の場所も知っています。彼らの目的は、いうまでもなく復縁です。彼女のマンションの部屋が見える路上から、行動を監視されることもたびたび。ひとり暮らしの女性が身の危険を感じるには十分です。しかもそのうちのひとりは、家に入れてもらえないことを不服とし、ついにはベランダから窓ガラスを割って部屋に侵入してきたとか。ちなみに彼女の部屋は2階にあるそうです。そのとき彼女を襲った恐怖は、いかばかりか……。はっきりと命の危険を感じたことでしょう。

 しかし、飲み会の席での男性陣の反応は、「いや~、男にそこまでさせるって、Aさんも罪な女だねぇ」というものでした。え? Aさんに原因があるとでも? そして次のような会話を交わしました。

「それはないよ。男が異常なだけじゃん。フツウはそこまでしないし」
男性陣「だからこそ、やっぱり男性にそこまでさせる何かがAさんにはあるんだよ」
「Aさん何もしてないのに勝手に男がエスカレートして、そんな犯罪まで犯しちゃったんだよ?」
男性陣「Aさんが、それだけの女ってことだじゃん」


ストーカー被害者は、圧倒的に女性


 あ~、なるほど。男性はむしろ「それだけAさんはいい女、男を狂わせる魔性の女」として、“称賛”しているつもりなわけですね。なんという履き違え! 悪気がないから、何を言ってもOKというわけではありません。が、当のAさん本人まで「別れるときに問題があったのかも……」と自信なさげに言い出すのです。非常にナチュラルな形で自己責任論が形成されていく様を目の当たりにし、せっかくの酔いが急速に醒めていくのを感じました。

 警察庁の「平成27年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等の対応状況について」という調査を見ると、被害者と加害者の関係で「交際相手(元含む。)」は、なんと49.6%。被害者の性別はだいたい、男性:女性=1:9。この手の話が出ると「でも女のストーカーも怖いよ」という話になりますが、少なくともこの調査で出ているような危害を加えるストーカーとなると、圧倒的に女性のほうが被害をこうむっていることになります。

「罪種別内訳」を見ると、殺人(未遂)から傷害、暴行、脅迫、強姦、住居侵入、器物損壊など、こうして並べるだけでも背筋が寒くなるようなものばかり。交際相手、元交際相手がストーカー化して危害を加えてくるという危険性は、どんな女性にとっても無縁のものではないということでしょう。

 交際中、そして別れる際に、後々の未練につながるようなことがあったとしても、それが「相手に危害を加えていい、命を脅かしていい」ということにはなりません。よほどのモラハラで恨みを買っていたのであれば話は別なのかもしれませんが、先の調査を見てもストーカー化する動機は「好意の感情」「好意が満たされず怨恨の感情」が圧倒的多数を占めていて、たとえば「モラハラにあったからその恨みで」という動機は、まったく見当たりません。

 そして、たとえどんなにこっぴどくフラれたとしても、もしくは未練が残るようなフラれ方をしても、それをどう処理するかはフラれた側の問題です。messyでも紹介されていた『レンアイ、基本のキ~好きになったらなんでもOK?~』(打越さく良著、岩波書店)を私も読みましたが、そのなかに「別れを告げた段階で、別れは成立している」といった内容の一文があってハッとしました。「別れましょう」「終わりにしたい」とどちらかが発言した段階で、その恋愛関係はもう終息しているはずなのです。


女性も悪い、という常套句


 私自身これまでいくつかの交際とお別れを繰り返してきたなかで、どうしてもそのショックを処理できず、「まだ、なんとかできるんじゃないか」「話せばわかってくれるはず」とウジウジ考え続けた経験もあります。でも、それは終わった恋愛を無理に巻き戻そうとしているだけ。現実には、巻き戻し不可なのに。その感情の落とし所をどこにするかは、繰り返しになりますが私自身の問題であって、もう恋愛関係にない相手をそこに巻き込むのはお門違いもいいところなのです。

 幸い、私は性格的に終わった恋愛をいつまでも抱えて、負の感情を自分のなかで醸造するのを好まない性格なので、引きずるにしても短期間で済みましたが、この処理があまり上手じゃない人もいますよね。いくら時間がかかってもいいと思いますが、「自分自身のなかで処理をする」ルールは守らなければいけません。復縁も世の中にはありふれているのでそれを願う気持ちも無理はないですが、その前の恋愛をいったん終わらせる必要があるのでしょう。

 だからこそ、私はAさんに一片の非もないと考えます。自分の感情を処理できずに、暴力に訴える男が100%悪い。痴漢でも性犯罪でも女性が被害者となるものには、「女性側も悪い」という自己責任論が必ずつきまといます。「露出の多い服を着ていたから」「隙があったから」……。それに対しては今後も異を唱えていきたいのですが、こんな身近に、こんな「ごくごく当然のこと」といった体(てい)で、ストーカー被害女性に自己責任論をふっかける人がいるというのは、少なからずショックな体験でした。しかも、ここまで書いたような内容をいくら説明しても、「Aさんってば罪な女」と混ぜっ返されるだけで、まるで対話にならない。問題の根深さを痛感しました。


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■桃子さん

オトナのオモチャ200種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。 ブログ twitter

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