【独り寝のお作法】

132. 年齢を重ねるほど、セックスは「それまで生きてきた人生」の総当り戦になる


hitori

 私、いつまでセックスをするんだろうーー初めてそう考えたのは、高校生のときでした。母が購読していた「婦人公論」を盗み読むと、性愛にまつわる特集が組まれており、そこではかなり年配の方々が……記憶が定かではないのですが、おそらく40オーバーのご婦人方です。JKだった私には想像も及ばない年代。そんな人たちが濃厚なセックスライフを赤裸々に語り、または心と身体の満たされなさを吐露していました。

 それを読んだ私は、「性というのはよくも悪くも、この先、何十年も逃れられないものなのか」「いまでもセックスのことを考えるのがしんどいのに、こんな大人になってもしんどいのか……」と、おののきました。ロストバージンしてまだ月日が経っておらず、性の悩みこそ多いけど、歓びはまだそれほど知らなかったため、この先ポジティブな性が自分を待っているとは思えなかったのです。

 そんな自意識がんじがらめ状態だった月日も遠くなり、いまは毎日セックスだのオナニーだのについて考え、それをひとりで愉しむこともパートナーと愉しむことも知った私は、当時とは別の意味で「いつまでセックスをするんだろう」としばしば思うようになりました。「いつまでセックスできるんだろう」といったほうが正しいかもしれません。パートナーがいない、または加齢によって体質が変わり身体が受け入れ体制にならない……。どちらにしろ、自分に欲求があるのにそれが満たされない状態はツライし、欲求そのものがなくなってしまうかもしれないと考えると、それもさみしい気がします。


将来、自分はどんなセックスをするのか


 官能作家の加藤文果さんの新刊「熟年セックスのリアル」には、私がかつて婦人公論で読んだ“性を語る人たち”と同じく、下は40代から上は70代までのセックスライフが収められています。男性の例が中心ですが、旺盛な欲求のおもむくままに性生活を謳歌する女性や、満たされなさを解消するため雑誌で見た“性の達人”に身を任せる女性も紹介されています。彼/彼女らのセックス・ヒストリーやセックス観だけでなく、濡れ場をが濃厚に再現されているため官能要素も十分!

 本書を読んで私がまず感じたのは、年を重ねるほど「なんとなく」ではセックスできなくなるのだ、ということです。自分の身体、パートナーの有無などクリアしなければいけないことが、若いころの比ではなく多いからです。いうまでもなく個人差はありますが、それでも年齢を重ねたらそのぶん大きなエネルギーを注ぎ込まなければ、希望するセックスライフは実現しにくいのだなぁ、と。

 そして、熟年になってのセックスは、これまでのセックス観、セックスライフだけでなく、人生観までもが反映される、いってみれば「人生総当り戦」になるとも感じました。

 といっても、若いころからチャンスにあふれまくりで数をこなした人ほど熟年以降もいいセックスライフが送れる、という単純な話ではありません。たとえば、冒頭の章では、妻に皮膚炎の持病があり愛撫をすると痛がるのでセックスどころではなく、長いあいだ欲求をくすぶらせてきた男性が登場します。それまでの半生におけるセックスのトータル回数は少ないものの、彼は自身が性に何を求めるかを常に考えつづけていました。そして、「彼女だ!」と思う女性と出会ったとき、自身でも驚くほどの行動力を発揮します。セックスができないからといって、その気持ちにフタをして「ないこと」にしていたなら、千載一遇の好機が訪れても気づかない、または腰が引けて見送ってしまうだけだったでしょう。

 また、本書の発売を記念して8月に行われたトークイベントでは、著者の加藤文果さんほか、クンニクマンさん(ハプバーオーナーとして以前に登場!)、飲食業から40代で出張ホストデビュー、その後、AV男優、AV監督と華麗にステップアップしていくISSEIさんが登場されました。そのときにクンニクマンさんが紹介していたのが、テクニックを過信する男性。

 しかも、自信の源は「性風俗店で評価された」「俺はいつも風俗嬢を時間ぴったりにイカせることができる」という経験を背景にしたもので、それってどう考えても風俗嬢が“サービス”としてイッタふりしてるやつだよね~、と誰もがわかるのに本人は気づかない。それでも、クンニクマンさん主催の「クンニ道場」でお相手をつとめる女性から指摘され、気づくことができれば以降のセックスライフも変わりそうなものですが、彼らは気づかない。憮然として帰ってしまったり、「最近、首の調子が悪くて」と的はずれな言い訳をはじめたり、自信の非を認めたがらないそうです。


セックスを卒業する、という選択肢


 このタイプの男性って、ベッド以外でも同じことをしていそうですよね。思い込みや誤解が生じるのは仕方ないにしても、誰かがそれを正そうとすると不機嫌になる。ひどい場合には逆ギレする。セックスは相手あってのことなのに、「俺の思う真実」を押しつけるのはナンセンスだと気づけない。

 還暦を過ぎてセックスパーティを渡り歩く男性は、「いい年して」といわれそうですが、その年齢でもってどんな場でも受け入れられる人柄の持ち主で、遊び仲間がサプライズでお誕生日を祝ってくれたといいます。年齢を重ねれば重ねるほど、人生観とセックス観が不可分となるからこそ、こうしてセックスを通じて人間関係を広げていく人も出てくるのでしょう。

 一方で、「もうセックスしなくていい」という人もいます。そのなかには、自分はしたくないのにパートナーに付き合って仕方なく……という人もいるはずです。そんな状況をスパッと断ち切ってセックスそのものから卒業する、という行動に移しやすいのもやはり熟年期なのだと思います。セックスを続けるにしろやめるにしろ、「なんとなく」ではできないからこそ、それまでの人生で培ってきたものが反映される。「私はいつまでセックスをするんだろう、できるんだろう」への答えは、「それは自分で決めること」なのだと教えてくれる1冊でした。


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プロフィール

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■桃子さん

オトナのオモチャ200種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。 ブログ twitter

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