【独り寝のお作法】

136. ガテン男子を縄で縛る! 女性緊縛師が引き出す「攻められる男のエロス」


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 緊縛。この文字面を見るだけで、私は心のエロススイッチが入ります。自分が「縛りたい」側ではなく、100パーセント「縛られたい」側であるためか、これまで「男性が縛られる」という発想がまるでありませんでした。不思議です。縛る側のイメージは男女両方があるのです。でも、その手によって縛られているのは、いつも女性。

 だからこそ、Facebookで流れてきた1枚の写真にドキリとしました。ガテンな男性が工事現場を思わせる殺風景な空間で、縄をかけられていました。湿ったTシャツ、頭に巻いたタオルからは汗のにおいや埃っぽさが漂い、一日を肉体労働に費やしたその筋肉は火照っていそう……。

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 これは、緊縛師・荊子(いばらこ)さんの作品です。彼女は数年来、親しくおつき合いしていて、ショーも観たことがあります。ただ縛りのテクニックや美しさを見せるにとどまらず、女性と女性とが、ときに互いを挑発し、ときにねっとりと視線をからませ合う……縛り、縛られることで刻々と変わる両者の関係性は、レズビアン的という表現に収まりきるものではありません。ともに絶えず動いているため、やがて紅潮し、うっすら汗が浮かぶ肌という、女性の肉体ならではのエロスを堪能できます。

 荊子さんの緊縛をスチールに収めた写真作品もすばらしい! その多くは女性をモデルとした作品で、キュートなものもあれば力強いものもあり、縄があることでエモーショナルになる女性の表情や肉体のいくつかは、当コラムの後半で紹介いたしましょう。私はいつもFacebookのタイムラインに彼女の作品が流れてくるのを楽しみにしているのですが、そんななか、件のガテン男性緊縛写真に出くわしたわけです。

 私の頭には、どうにも「受け入れる性=女性、攻める性=男性」がこびりついているようです。身体の構造的にそうなることこはまぎれもない事実ですが、セックスは挿入し/挿入されるだけに限定されずさまざまな行為を含みます。そのなかで、自分から積極的に男性に仕掛ける女性が多いことも知っています。

 女性同士、男性同士の行為もあるので、セックスにおける役割分担がこんなにガチガチなものではないと十分承知している……つもりだったのかもしれません。こうした「思ってもみないモノ」に出くわすと、自分の奥の奥のほうにあるセックス観がポロッと出てしまうのですね。


なぜ男性を縛るのか?


 そんな私のなかにある固定観念を揺さぶった作品について、荊子さんを直撃してきました。

ーー荊子さん。どうして男性を縛ろうと思ったの?

荊子「このガテン男子は2カ月ほど前に撮り下ろした作品。私はずっと男性を縛って作品にしたいと思っていて、実際に挑戦してきているんだけど、これが想像以上にむずかしかった! どうしてもM男っぽくなってしまって……。緊縛=SMではないし、女王様とM男奴隷という関係ではなく、ふつうの男性が女性に攻められるときに見せるエロスをそこで表現したいので、M男にはしたくないんです。私はもともと、男性が感じている姿が大好き。かっこいい男の子が喘いでいる姿とか。縛ることで、そんなときに見せる表情を引き出したくて、長いあいだ試行錯誤してきました」

ーー隙みたいなのが出てきて、弱さや脆さみたいなものが見えるけど、それは決して情けないものではない、って感じ?

荊子「うん、切ない表情とか、いいよね。日本ではあまり見ないけど、ハリウッド映画では女性がバーンッと男性を押し倒すシーンがよくあるよね。そういうのを洗練した形で表現したくていろいろ試してきたんだけど、M男っぽくなってしまう壁は案外、厚かった……。最近、これはモデルによるところが大きいと気づきました。ふだんから裸の表現をしているAV男優さんにお願いした時期もあったんだけど、今回はフツウの男の子にお願いして撮らせてもらいました。写真の彼は、アルバイトで肉体労働をしている男性。そのバックグラウンドを活かした作品にしようと思いました」

ーーいわゆる緊縛作品って縄目を見せる、縄目を見たいっていう人が多いと思うんだけど、荊子さんの作品はこれに限らず、縄がそんなに写り込んでいないよね。

荊子「全身をがっつり縛って、縄目を多くして……となると、SM色が強くなりがち。たとえば手首を縛っているだけでも、拘束されているのは伝わると思うし、それによって見えてくるこの男性と相手との関係性とか、その場の空気とか、私はそういうものを表現したかった。縄目をたくさん作りながら全身を緊縛するって、練習すればある程度までは誰でもできること。でも、私はただ縄目を見せたいんじゃなくて、そこにいるふたりの関係性や、この後の展開などを想像してもらいたいんです。それには、そんなにたくさんの縄目は必要じゃないかな、と」

ーー視覚的に刺激を受けるのはもちろん、においや埃っぽさ、体温など彼の生々しい存在によって五感を刺激されながら、拘束されているという非日常感に自分も入り込む……ドキドキする!

荊子「男性をエロティックに撮るのはむずかしい、とつくづく感じます。女性って、その存在だけでフォトジェニック。別にそれはモデルさんだからというわけではなく、すごく太っていてもガリガリに痩せていても作品になる、と感じます。着衣だからとか、ヌードだからとか、っていうのもあまり関係ない。でも、男性は脱いだからといってセクシーになるわけじゃないし、いくらきれいな裸でもそこに縄をかければ作品として成立するわけでもない」

男性と対峙したときの、複雑さ


ーーたしかに、「男性のエロい写真」って少ないと私も思う! 『an・an』のセックス特集でもアイドルや俳優が脱いでるけど、ただ裸になってお尻見せたらエロいってもんでもないでしょ、って。

荊子「男性を縛る、責める、切ない感じをエロくかもし出す……これがむずかしいのは、私のなかで男性との精神的、肉体的距離感が掴めてないから、っていうのもあると思う。私の側に、『責めたい』『切ない顔してほしい』という願望や、承認欲求、容姿的なコンプレックスがあって、男性と対峙したときに複雑で混沌とした思いを抱えてしまうから」

ーー女性を撮るときには、そういう複雑さはない?

荊子「ないわけではないけど、同性だからその複雑さもわりと理解できるかな。男性モデルだと、私の混乱具合が作品に如実に出るので、人前に出したくないと思ったこともある。でも男性をくり返し撮るようになって、その混乱具合こそが私のいまの内面だと気づいたとき、逆に面白くなってきて。これからどう変化していくのか、自分でも興味深いですね」

ーー荊子さんが男性を縛る作品は、ほんっと個性的で……

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ーーこれ、すごく驚いた! おじさんリーマンを縛ろうっていう発想がどこから来るんだろう、って。

荊子「これはドイツ人の男性カメラマンとの共作なんだけど、彼にとって日本の“サラリーマン”の生態がすごく面白かったみたい(笑)。満員電車に揺られたり、居酒屋でぐだぐだと愚痴をいいながら飲んだり。縛られてぎゅーっと内に向かっていたエネルギーが、その縛りを解こうと外に向かっていく感じ……という彼の表現に添って、縛ってみました」

ーーそれがエロスかというと、むずかしいけど……。

荊子「私のなかでも『縛り=エロスを撮るもの』という固定観念があって、このシリーズは、その観念が覆った作品だと思ってます。エロスだけじゃない、内面を出せるツールが縛りなんだな、って」

 荊子さんの口からも“固定観念”というワードが出ましたが、彼女の作品を見ていると、「縛られるのは女性、縛るのは男性」という私の頭にこびりついていた固定観念が、なんて貧しいものだったんだろう思わされます。この考えを根こそぎ捨て去るのもまた、むずかしいことなのでしょうが、それでもこうした作品を見て、常に揺さぶりをかけるのを忘れてはなりません。凝り固まった考えは、セックス観ばかりでなく男女観も貧相にするからね!

荊子「緊縛ショーの世界でも、もっと男性モデルが増えていいと思うんだけどね。何より、私自身がそれを観たいんです。でも、ゲイ同士のショーでビシビシ縛って派手に吊り上げて……となると、そういうのを求めているわけじゃない。もっとふたりの関係性が伝わってくるような、縛りのあいだから何かが漏れでてくるような、そんな縛りが出てきてほしいと思います」

 ちなみに、私は荊子さんの女性を縛った作品も大好き。いくつか、こちらでご紹介します。

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■桃子さん

オトナのオモチャ200種以上を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。 ブログ twitter

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